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渡しと私

  • 執筆者の写真: 店主
    店主
  • 2019年10月16日
  • 読了時間: 2分

私はアンティークが好きだ。

古いから良い、とかそう言った訳ではない。

顔も名前も無い過去の誰かの仕事に触れる事で、その時代にその人が存在していた証左を見ることが出来るからだ。


開店以来お店に出ずっぱりだったので映画を観に行った。

"ある船頭の話"と言う映画だ。

とても良い映画だった。

映画を観てから、先程の事をよく考える。



船頭のトイチが生きた時代は、それこそ世が便利になる時代であった。そして自身が必要となくなる時代であったのであろう。

時代が変わると生き方も変えなければならない。

それは川上から川下に下る水流が停滞しても、登ってもいけないように。

しかし、彼自身は流れていく筈の少女を拾い、時代と言う流れから立ち止まってしまった。


渡しと言う職業は現在も伝統的なものとして残っている。

文化的なものとして観光資産として、重用されている産業であろう。

だが、渡しと言う仕事が今も脈々と受け継がれている事に彼は喜びを覚えるのだろうか。


仕方なしに仕事をし、仕方なしに廃業する。

そういった人は数多くいたのであろう。

名前も残らず、記憶にも残らずに消えていった人達は、その職業に対して何を思っていったのであろうか。


トイチは最期に川を上っていく。

その先の物語は無いのだろう。

そして、時代と共に川下へ流れゆく人々を振り向く事もないのだろう。


名も無き人達がどう生きて、どう死んでいったのかを感じられる機会は意外と少ないのでは無いだろうか。

No Room For Squaresはそのような、時代に取り残されて残ったものが沢山あり、毎日人々を照らしている。


私はそんな店の店主になってしまった。

トイチが少女を拾った行為と変わらない行為なのかもしれない。

私は、この職が必要にならなくなった時代では、何を思うのだろうか。



帰り際に、劇中曲のLPを購入した。

タイトルは

They Say Nothing Stays the Same.


店主

 
 
 

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